53歳責任世代が浦添市の新しい明日を創る! 松本哲治「百花繚乱日記」ブログ

まつもとてつじのドタバタ市長奮闘記

梅雨のある日に

ひだまり通信7月号「百花繚乱日記コラム」より転記

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「梅雨のある日に」

 先日、ある子の家を訪ねた。年齢的には小学校3年生くらいか。祖母と二人暮らしらしいが、ご両親がなぜいないのかはわからない。住所から場所を調べ、たどり着いたその家の前で私は暗い気持ちになった。雑然とした玄関前にはガラクタが並べられ、もうどれほど前からそこに放置されているのだろう、立て掛けられ腐れたマットレスが湿ったカビの匂いを放っていた。玄関を叩いても反応はなく、窓から覗き込んだ台所は荒れていた。どんよりと淀んだ空から落ちる雨を吸ったマットレスのように私の心はますます重くなり、止む気配のない空を見上げながら帰路についた。
 
 介護や福祉という仕事柄、私はさまざまな困難の中で生きていかなくてはならない子どもたちを知るようになった。学校という場所は、遠くから表面的に見れば、どの子も楽しそうに学校生活を送っているように見える。働き者のお父さんと優しいお母さん、そして、熱心な先生方に守られながら、勉強や遊び、部活動に一生懸命に取り組んでいる子どもたちを見ていると、何も問題のない明るい学校生活のように見える。運動会に、遠足、学芸会。PTA会長をしている私でさえも、この表面的な印象だけで子どもたちを見てしまいそうになる。でも、注意してよく見ると、それぞれの事情が見えてくる。
 
 別のとある小学生の場合。父親はなく、離婚後から心の病を抱えた母親は家事や育児の一切を放棄。中学生の長女が小学校に通う三人の弟妹たちの面倒を見ているが、家は荒れ放題。学校で出される給食だけが唯一のまともな食事という有様だった。母親は心療内科の病院へ入院、子どもたちは転校し、児童養護施設へと行くことになった。
 
 また、別のとある高校生の場合は、母親は夜の仕事でほとんど帰らず、アルコール依存症の父親が、この子がバイトで得たお金さえも取り上げている。お風呂や洗濯もままならず、学校でも匂いが原因で友人ができないとのことだった。
 
 僕がどれほどの幸せの中で大人になったのかを考えて行くうちに、私の暗い気持ちは、少しずつ別なものへと変わっていった。彼らの境遇を嘆き悲しむだけでは何も変わらない。自分の幸運さに感謝するだけでも意味がない。子どもたちの誰もがこの世に生を受けたことを後悔しないように、暗闇で膝を抱えて泣いている子どもたちに必ず笑顔と希望を届けなくては。

僕が先にいただいた幸福を倍にして、子どもたちに返していきたい。


Posted by 松本哲治 at 2012年06月29日   16:57
Comments( 2 )
この記事へのコメント
本当に最近のニュースでも毎日のように幼児が虐待や育児放棄等によって命を奪われている事を耳にします。

どうすればいいのでしょう??

幸せになるために、この世に生まれてきた大切な子供たちを、これ以上悲しい想いを味わってもらいたくない。

頑張って生きてきたお年寄りも、もちろん幸せで居てほしい。。。

何をすればいいのでしょう・・・
Posted by nasukayoko at 2012年06月30日 21:18
まずは自分自身を一生懸命に生きること。そして、少しゆとりが出てくれば周りの人を幸せにすること。そして、より大きな使命に向かうこと。でも、基本はやっぱりいつも自分が笑顔でいることだよね。そんなことを僕は考えています。
Posted by 松本哲治松本哲治 at 2012年07月04日 10:52
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