53歳責任世代が浦添市の新しい明日を創る! 松本哲治「百花繚乱日記」ブログ

まつもとてつじのドタバタ市長奮闘記

別れの夜に

最近UPすることを怠っていた
ひだまり通信「百花繚乱日記」の1月号を載せておきます。

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「別れの夜に」

 家族との話し声が廊下まで聞こえてくる程だった。病室に入ると、私が予想していたよりも割と元気な彼女が、上半身を上げた電動ベッドの上に腰掛けて穏やかな笑顔で私を迎えてくれた。彼女の病名は癌(ガン)。もう既に積極的な治療は望めなかったのだろう、彼女はホスピス病棟に入院していた。

 結婚の時に指輪を買ってもらえなかったことを何十年も話していたという彼女に、病棟で行われた金婚式でご主人が指輪をプレゼントしたとのことだった。その時の写真を嬉しそうに説明している彼女の指には素敵な指輪が輝いていた。

 話が一段落つくと彼女は私にハグしてくれた。癌という疾患には珍しくふくよかな彼女の背中に手を回し、私は彼女を抱きしめた。その時の感触や彼女が耳元でささやいた「頑張ってね」という励ましの声を私は今でもはっきりと記憶している。どっちが病人なのかわからないような面会の帰り際、再会を約束して病院を後にした。

 その後、私は数日後に行われる予定の大切なイベントの準備で奔走していて、それを成功させてから彼女を再度訪ねるつもりだった。何とか無事にイベントを終えた翌日、彼女が前日に、つまり、そのイベント当日に天国へ召されたと電話を受けた。

 予想よりもはるか急に訪れた突然の別れに戸惑いながら、私はその夜、びっしりと詰まったスケジュールを無理矢理空けて、彼女宅を訪れた。賛美歌が流れる自宅で、もう既に目を開けることのない、もうハグすることのできない彼女と再会した。

「また来てね」
「はい、また来ます」

 あの日、二人で交わした短い約束の会話が心に残っていて、私は申し訳ない気持ちで胸が潰れそうだった。次の予定が迫っていて慌ただしくその場を去らなければならない事情も加わって、すまなさと謝罪の気持ちで心が塞いだ夜だった。

 自分一人ではどうしても処理できない慙愧(ざんき)の気持ちを持て余しながら、その夜最後の訪問先で少しだけその件について話した。すると、ある人が

「ちゃんとその方は、松本さんのことも全て考えて旅立ちの時を選んだのよ。
天国から見守ってくれているから何も心配要らない」

と話してくれた。

 少しだけ気持ちが楽になって夜空を見上げると、晴れた冬空に星が輝いていた。

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Posted by 松本哲治 at 2013年01月25日   00:25
Comments( 1 ) コラム:百花繚乱日記
この記事へのコメント
松本さんおはようございます。
あなたが当選することを願い
わたしも夫婦で祈っています。
彼女の旅立ちはきっと松本さんの
背中を押し続けて勝利に導いて
くれると思います。
Posted by あゆママ at 2013年01月25日 07:35
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