そこにある青空

松本哲治

2010年03月02日 00:09

ひだまり通信3月号「百花繚乱日記コラム」より転載

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「そこにある青空」

朝八時二十五分、朝礼の行われている事務所をそっと抜け出し、ヘルパーさんと二人でその子の待つ自宅へ向かう。障がいのあるその彼は一人で学校へ通えない。そんな彼をヘルパーさんと一緒に車に乗せて、僕は特別支援学校へと車を走らせる。

昨夜、降った雨が街を濡らし、木々や道端の花たちが生き生きとしている。朝日で街中がキラキラと輝いている。

浦添市内には障がいのある子が通う特別支援学校が二校ある。大平と鏡が丘だ。学校へ到着すると、そこには先生たちが素敵な笑顔と元気なあいさつで僕らを迎えてくれる。

僕はこの特別支援学校への朝の送迎が好きだ。

「○○君、おはよう!」

「おはようございます、○○さん!」

まるで元気な朝市みたいだ。

スクールバスを降りてくる子。親御さんに連れられてくる子。車いすに乗ったままの子。支えられながら歩いてくる子。大声であいさつを返す子。いきなり走り出す子。いつも恥ずかしそうにしている子。先生とハグする子。お母さんと離れない子。ヘルパーさんと一緒に楽しそうに集団で歩いてくる子。

そして、たくさんの生徒たちを迎えるたくさんの先生たち。みんな、元気で、明るくて、爽やかで。

僕はこの特別支援学校の朝の風景が大好きだ。学校入り口で毎朝繰り広げられるこの笑顔と元気の大交換会がたまらなく好きなのだ。

雨が降れば濡れないように、寒い朝には冷えないように、晴れの日も、風の強い日も、誰が強制したわけでもない柔らかな優しさと、まるで太陽のような元気さに包まれながら、僕は今朝も彼らを玄関で降ろして、学校を後にする。
 
「ありがとうございます」

「それじゃ、今日もよろしくお願いします!」

「は~い、行ってらっしゃい!」

「ど~も~!」

子どもたちを見送った僕が、穏やかで爽やかな風を背中に受けて、今度は僕が見送られる番だ。

子どもたちから元気と勇気をもらい、どっちが助けているのかわかりゃしない。昨日の疲れも、今朝の失敗も、明日への不安も、全てを和らげてくれる。

是非、あなたにあの朝の光景を見てもらいたいと思う。そして、特別支援学校正面玄関から空を見上げて欲しいと願う。

元気と笑顔と笑い声のこだまするあの場所で、きっと僕らは「いつもそこにある青空」に気づくことだろう。

そう、青空はいつもそこに。

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