幸多かれ

松本哲治

2007年03月20日 16:16

最近、ガンでご主人を失った古くからの友人と再会した。
彼女と直接会うのは約12年ぶりである。

人間ドックでガンとわかった時には既に末期になっており、
発見からわずか8ヶ月後、43才で天国へ旅立った。
信じられないほど急な話だった。

いろいろ心配していたが、思っていたより元気そうで、
何よりも再会できたことが嬉しかった。

「少し痩せたね」
「これでもだいぶ太ったんだよ」
「大変だったんだね」
「大変だったよ。ほんとみんなで死んじゃおうかって何度も思ったよ・・・」

走り回る小学生の息子たちを遠くに眺めながら、彼女はぽつりと話した。

「この子たちに感謝だね」
「ほんとこの子たちがいなかったら、自分はいなかったよ」
「そうかぁ・・・」

僕らは若い頃に出会った。

語ることと言えば、夢と希望しかない頃に出会った。
世界に思いを馳せ、輝く未来を根拠もなく信じ、
恐れることも知らず、失うものも持たない頃だった。

あの日々から時間は流れ、
それぞれの出会いと別れを経験して、
再会を果たした。

あの頃に想像することさえできなかった今を、お互いに生きながら。

「でもね、あの人がいつも近くにいてくれるのは感じるんだ・・・」

手にしたものさえ信じられず、いつも何かに渇いていたあの頃から、
見えないものを感じ、聞こえない声さえ信じることができるようになるまでには、
お互いにそれなりの時間と理由が必要だったのかもしれない。

人生なんて瞬間にしかすぎないから、今を大切に、周りの人への感謝を忘れずに、
日々起こる小さなことに心惑わされず、自分を生きていこうと約束して分かれた。

ご主人に見守られながら、彼女と子どもたちが喜びに満ちた人生を歩めますように