お料理と介護

松本哲治

2006年12月18日 15:22

先日、山本彩香さんのお店に行った。久米にある有名な琉球料理の店である。

山本さんのお料理は、いつも丁寧で品がある。
それでいて気取ったところがなく、優しく包み込んでくれるおいしさは、
彩香さんご自身の人間性がお料理を通して出てしまうのだろう。

胃袋だけじゃなく、心まで満たしてくれる不思議な力を持っている。
彼女の手作りのお料理をいただきながら、「料理」と「介護」は良く似ていると思った。
それは、早いことも大事だけど、早けりゃいいってものでもない、という話になった。

食事介助、入浴介助、オムツの交換などなど、
介護も慣れないうちは、バタバタと効率が悪い動きでやたらと時間と体力だけを消耗してしまう。

でも、だんだん慣れてくると、コツを覚え、段取りを考えながら、要領よくテキパキとできるようになる。
すると、今度は、早く数をこなすことが中心になり、
一人ひとりに向かう丁寧さや真剣さが抜け落ちていく。

つまり、テクニックだけの心がない介護になっていくのだ。

僕が以前に施設で介護職として働いていた頃にも似たようなことがあった。

施設では、巡回しながらおむつの交換を行うことがあるのだが、
うまい人は時間をかけずに回ってくるのだ。

最初は、テキパキとしているから早いのだと思って感心していたが、
よく見ると「ただの手抜き」という場合も残念だが少なくなかった。

これには、ある程度の年齢や経験を経たベテランと呼ばれる人たちは注意(俺もそんな年だ)。

つまり、うまくなる、慣れる、技術を覚えると、要領が良くなる。
人間だから「楽」をしたくなるものだよね。

確かに、より早くスピーディーに終わらせることができるのは、
ある意味で技術の向上かもしれないが、

そこに心や誠実さや丁寧さが失われていくとしたら、意味がない。

彩香さんの料理には、労力や時間を惜しまず心を込めた味がある。
料理の一つ一つに気品があるのは、手を抜いていない、「楽」して作っていないからだろう。

それは、料理も、介護も、ケアプランも、そして、経営も同じこと。

答のない介護の現場に悩み続けながら、
それでも、一人ひとりに心を込めて、誠実に、少し立ち止まって介護やプランを作っていく。

丁寧でありながら無駄がない。それって大変だけどね。

彩香さんのお料理に負けないよう、
来年は、〈手間隙を惜しまず丁寧に心を込めた〉仕事をしたいと思った。

ひだまり読者のみなさまにも、良い年でありますように・・・。

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